漱石 門

漱石全集6巻 門




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「門」読書メモ


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明治43年3月から6月まで、「朝日新聞」に連載され、「三四郎」「それから」と三部作をなす作品である。

前作の「それから」は、主人公代助が友人平岡の妻三千代と恋愛するという設定であるが、自分の恋人を友人に譲るという最初の自己欺瞞が間違いの根源にあるということに気付くという内容。結婚と恋愛の対決を追求した作品である。「門」は「それから」の主題をさらに推し進めている。

主人公宗助は友人の妻御米を奪い、御米は夫に背いて宗助に走った。世間から孤立した愛の力、自然の愛に従うという個人主義的な生き方が社会の同義的な批判に耐えることができずに苦悩するという展開である。宗助は、山門に入り、老僧を訪ね、そこで十日間を不安のうちにすごしたのち御米のもとに戻る。

漱石は二七年の末に鎌倉円覚寺の釈宗演に参禅している。このときの心境が宗助に託されているともいわれる。漱石の苦悩と宗助のそれとは質的に異なるとはいえ、参禅の体験を利用したものととどめる解釈すべきであろう。